今年ももう終わりに近づいてきました。
2015年を国際的な視野で振り返ってみると、
フランスで起きた1月のシャルリー・エブドの襲撃事件に始まり、11月のパリ同時多発テロで終わるという、
イスラームとの因縁が深まった年であったように思えます。
我が国でもIS(イスラム国)に人質が殺されたこともあり、他人事ではありません。
ところが、日本では宗教全般に疎く、
とくにイスラム教については理解が薄い人が多いのではないでしょうか。
仕事の時間中でも、お祈りの時間が来るとメッカの方向に祈り出すとか、
豚肉やお酒が禁止されているとか、断食をする月があるとかということは知ってはいるが、
なぜそんなことをやるのかわからない、
宗教というのは時代遅れなものだと思っている方もいるかもしれません。
ましてや、その信仰からジハード(聖戦)と称してテロを行うとなると、
危険なカルト集団に見えても仕方ありません。
しかしながら、一方で、イスラム教徒の数は16億人と、世界の2割もの人がその信者であり、
現在でもなお信者を増やしているという事実は、
イスラム教にはそれだけの魅力があることを示しています。
とくに、若者を引きつけているのはなぜなのでしょうか。
今回は少し、イスラム教の魅力について書いてみたいと思います。
イスラム教はよく、イスラームという共同体であると言われています。
イスラム教の発祥の地である中東は、砂漠がおおく気候も農業に適している土地ではありません。
そこで、彼らは強い結束をする必要があったのです。
それまでは部族ごとの対立が激しく、争いがたえなかったそうです。
そのような中でどのようにすれば強い結束が生まれるのでしょうか。
そのための原理が、六信五行と呼ばれるような厳しい宗教的実践であると私は考えています。
これは、「部活動」を思い浮かべればわかりやすいと思います。
強豪校で部活をしてきた方ならよく理解できるかもしれませんが、厳しい練習をすればするほど、
その厳しい練習を一緒に乗り越えてきたとして、メンバーの結束力は高まっていきます。
これと同じで、イスラム教は同じ行為を行うことで結束力を高めているのです。
たとえば、富んだものは喜捨という寄付をおこないます。
なぜこのようなことをするのか、それは同じ苦難を乗り越えている仲間だからです。
断食を一ヶ月するのも、貧しい者への気持ちを理解するという面もあるのです。
このような助け合いの力があるゆえに、世界の2割もの人がイスラム教徒になるのでしょう。
そして、このような連帯感も、同じ行為を行ってきていない人には理解できないということも、
部活動に似ていると私は思います。
ラグビーをやっている人は、チームメイトとのものすごい連帯感を持っているそうです。
その連帯感があるからこそ厳しい練習にも耐えられ、
ラグビーそのものも楽しいと感じられるそうなのですが、
傍から見るとあの厳しいスポーツをなぜやるのかと理解されないこともあるらしいです。
以上のように、イスラム教は厳しい掟の中で強い連帯感を生み出してきました。
一方で、先進国では個人主義化が進み、孤立するものも増えています。
そのため、先進国の若者の中には、経済的な不安定さもあり、
助け合いのできる仲間がほしいと思い、イスラム教に入るという人も多いそうです。
このように考えると、どちらも社会制度のひとつであり、一長一短があるように思えます。
月並みですが、私たちはまず、お互いを理解しあうところから始める必要があるのではないでしょうか。
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