みなさんは、小説を読んでいますか?
わたしは好きな方ですが、
最近は忙しくてなかなか読めないでいます。
それでも、
大学の先生の
「本屋さん大賞や芥川賞受賞作品くらいは読んでおきましょう」
という言葉を胸に、なるべく読む努力をしています。
ところで、なぜ彼はこのようなことを言ったのでしょうか。
それは、文学は(文学に限らず文化は)その社会を表現するからです。
特に、賞を受賞するような作品や売れている作品は、
受け入れられるだけあって
鋭く現代社会を表していることが多いのです。
さらに、その表現が学術書と異なりわかりやすく、
具体的である一方で、
抽象的にどのように解釈すべきなのかと考える余地が残っているため、
たいへん面白いのだと思われます。
たとえば、2009年に小説すばる新人賞を受賞した
『桐島、部活やめるってよ』は、なにがすごかったかと言いますと、
なんと桐島が一回も登場しなかったところが凄かったのです。
本編には一度も登場しないが、学校で影響力のある桐島が、
部活をやめるということにたいする周りの反応を描いております。
これがただ「新しい」だけでなかったのは、
このように自分とは関係ないはずのおおきなものに振り回されることを、
私たちが実生活でどこか実感していたからでしょう。
ある学者は、
これは国際政治や金融経済中心の現代社会の縮図だ
と言っています。
つまり、どの国もアメリカという影響からは逃れられず、
アメリカが咳をすると日本が風邪をひく
といったような関係にあるということ。
または、金融商品に縁がないはずなのに、
リーマンショックのような金融恐慌で不況の煽りを受ける
といったようなことです
(奇しくもこの年にこの本は賞を受賞していますね)。
これらの背景から、最近の若者はどこか諦観していて、
運命や才能にはかなわないと思う人が増えている
という研究もあるくらいです。
なるほど、
たしかに私たちの価値観や生活は社会に大きく影響されています。
それをわかりやすく、
面白く可視化したものとなりやすいのが小説なのです。
最初は娯楽として読むのもいいですが、
徐々に自分なりに解釈をしてみたり、
評論を読んだりしはじめると、
その面白さは何倍にも膨れ上がることでしょう。
こうして、新しい価値観や世界観に触れることは、
自分の世界をも広げることになります。
このことは、実存、
つまり「人はなぜ生きるのか」という人生最大の問いに応えるための道へと繋がることだとも思います。
自分の人生に価値付けや意味付けをするのは自分です。
そのためには、
自分自身がしっかりとした価値観や世界観を持っていなければなりません。
ですので、小説をただの娯楽と切り捨てず、
たまには読んでみてはいかがでしょうか?
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