Urbans ,LLC / アーバンズ合同会社

詳しい会社紹介

アーバンズ合同会社の理念は、「個性の発揮と連帯」です。そして、わたしたちはこの理念のほかになにも目的をもっていません。なぜなら、会社の目的のためにわたしたちがいるのではなく、わたしたちのために会社があるからです。

そのため、わたしたちは労働者協同組合的経営を行っております。労働者協同組合とは、労働者自身が経営に関与し、自らの意思で働き方を決めていく仕組みです(注1)。一言で言えば、「お金じゃなく、自分たちのために働く」ことを追求しています。つまり、仕事が先にあるのではなく、人が先にあり、その人に合った仕事を作ることを行っているのです。その結果として、複数の事業があり、それぞれが時に連携をするという形で結実しています。

このようにいうと理想主義や幻想だと言われたりもしますが、わたしたちの会社で実際に起きたことは、真逆の事態でした。

たとえば、売り上げを上げて給料が上がるような仕事を提案しても、「自分はそういう働き方をしたくない。そもそもお金が目的ならこの会社には居ない」と言って断る人がいます。また、売上や利益の高い事業を行っているメンバーが会社の花形になるどころか、「自分はたまたまお金を稼げる業務をしているに過ぎない。赤字でも大事な仕事を地道に働いている人こそ偉い」と共に働く者をリスペクトし、進んで補填をしたりするのです。

しかしながら、よく考えればこれはまったく不思議なことではありません。人類学者グレーバーの著書『ブルシットジョブ』によると、エッセンシャルワーカーという世の中に本当に必要な仕事は低賃金で、ホワイトカラーのように世の中に必要とされない仕事が高級取りなのは、エッセンシャルワーカーに対するひがみにすぎません。「本当に意味のある仕事をしている人は、それだけで充実しているのだから、報酬は低くて良いだろう」という逆転した論理が働いているのです。

逆に言えば、本当に重要なことがなにかをわかっていれば、お金で上下関係が生まれるどころか、「稼げずとも重要なことをしている人たちこそ支える」という発想に至るのではないでしょうか。わたしたちの会社では、まさにそれが実践されてきました。

なぜそのようなことが可能だったのかと言えば、それはわたしたちが少人数で、互いを良く知っていたからです。会社の目的で集まったのではなく、「あなただから一緒に居たい」と思える関係があったからです。こうした関係性の中では、お金以外の価値が可視化されやすくなります。そして、異なる価値観を持つ他者を信頼し、その都度、会社の目標も柔軟に決めていくことが可能になるのです。会社がお金を目的とし、それを追求しない者に罰則を与える力を持っていたり、自己責任としてリスクを負わせたりするような組織ではそれは叶わないのです(注2)。

こうした取組を「ユートピア的だ」と思う人もいるかもしれません(注3)。しかし、重要なのは、こうした小さな社会が実際に存在していることそのものです。そしてそれが、他の誰かの「自分ならこういう社会にするのにな」という思いを引き出せるのであれば、それだけで大きな意味があるとわたしたちは信じています。アーバンズ合同会社の社会的使命は、個人を尊重しあい、自分たちのための活動を続けることによって、他の人をインスパイアすることなのです。

注1 現在、「労働者協同組合」は法人格として法制化されており、明確な原理・原則が定められています。弊社は、そうした法制度に基づく協同組合ではありませんが、その理念を参考にしながら独自の実践を行っています。弊社の取り組みは、松本典子氏の著書『労働者協同組合とは何か―連帯経済とコモンを生み出す協同組合』にも紹介されており、その理念に沿った活動であると考えています。より体系的な知見を求める方には、歴史あるワーカズコレクティブやワーカーズコープの事例も参考になると思われます。

注2 大航海時代に北米に来た白人たちをみて、ネイティブアメリカンはびっくりしました。それは文明が発達していたからではありません。上司が一方的にはなし、それを部下がぺこぺこ聞いているのをみてびっくりしたのです。ネイティブアメリカンでは、そのような命令をしてくる人間は笑われるだけです。それが、組織の目的に従わせ、従わぬものには罰を与える制度を持たせることにより、歪んだ人間関係が維持されることとなりました。ちなみに、ネイティブアメリカンは頭が良く、そのときに西洋人のおかしなところを論破していったことの影響で、フランス革命時の啓蒙思想にまでつながったという説があります。

注3 おそらく、一番の批判は「生産性」がないということでしょう。しかしながら、実は経済学者でも「生産」とはなにかを定義するのが難しいのです。工場労働時代ならいくつ製造したかで測れたかもしれませんが、サービス業の時代は一体なにが生産されているのでしょうか?ホストは一体なにを生産しているのでしょうか?このように考えると、わたしたちは社会関係、しいては人間そのものも生産しているとすらいえそうです。それが貨幣化されるかどうかは社会の状況で変化するだけです。それが現在の少子化の原因の一つとして、子どもを育てることは「コスパが悪い」とされていることに象徴されているように思えます。しかし、パフォーマンスとは一体なにかと誰が定義できるのでしょうか。

執筆:田井 勝