Urbans ,LLC / アーバンズ合同会社

第十一回「ビジネスの判断に勘を利用してよいのか」

ビジネスにおいて「勘」というものは有効なのでしょうか。

ためしにgoogleで「ビジネス 勘」で検索してみると、

「勘に頼るな」という記事が多数を占めていました。

たしかに勘というものは極めて主観的で、

合理的ではないように見えますね。

けれども、勘がするどい人は実在すると考えている脳科学者が、

じつは多いのではないのかと私は思います。

その代表者はアントニオ・ダマシオです。

彼は「ソマティック・マーカー仮説」という脳科学の仮説で有名になりました。

ソーマはギリシャ語で身体を意味し、

身体の変化(情動)を脳は記憶し(マーカーをひき)、

何かの判断のときの基準にするといったような仮説です。

くわえて、情動を知覚されたとき、それは感情となります。

たとえば、蛇に噛まれて危険状態に陥ったとき、

心拍数が上がることは情動です。

その心拍数の上昇を知覚し、

焦ったり恐怖を感じたりすることが感情であるといっていいと思います。

そして、次に蛇を見たとき、反射的に心拍数が上がり、恐怖を感じ、

蛇に触れないようにするのです。これがダマシオの大まかな説です。

このように、我々は生きていく中で膨大な情動を経験し、

それを蓄積し、判断基準へと導いています。

こうすることで、

考えなければいけない情報量をカットしているのかもしれません。

そして、蓄積がなされればなされるほど、

その判断の精度は高まっていきます。

たとえば、強い棋士が、時間がない中で選択を迫られたとき、

こちらのほうが良い感じがしたときわめて主観的なことを言ったりしますが、

それはいままでの情動の蓄積の中で、

良い結果をもたらしたことが多かったことを情動として瞬時に思い出しているのです。

逆に、

前頭葉の損傷やロボトミー手術によって感情の起伏が限りなく薄くなった者は、

決断ができないといいます。

感情は合理的判断に邪魔だというが、

実は感情がなければ決断すらできないのですね。

以上のように考えると、たしかに「勘が優れている人」というのはありえそうな話です。

とはいえ、やはり蓄積があってのことであることを忘れてはいけません。

素人の勘が危ういのは、

まったく異なるケーススタディによる情動の蓄積からの判断だからです。

そのような意味では、「勘が鋭い人」は、誰よりも失敗を重ねて、

学んできた人のことなのかもしれませんね。

「勘」とは、努力に努力を重ねて、知恵を絞りに絞った最後に、

自分からのご褒美として現れるものだと私は思います。

「勘が鋭い人」になりたいものですね。